20110614

TTRRIIPP


110612_185643


どこか遠くに出るときは、
いつも何かを探している時だ。


窓に反射する車内の映像のせいで、
常磐線の夜景は途切れ途切れで私に届く。


時々すれ違う電車の一瞬の光りや、
ぽつぽつと流れる街灯によって
外の世界は辛うじて形状を保っている。


冷たくて、どこまでもファンタジックで
闇を突き付けられると同時に、
いつまでも夢を見ていていいと言われているような

窓の向こうの曖昧な輪郭には、
一種独特の妙な安心感が宿る。


ここでは「個」であることが、なんの意味も成さない。

自分が誰である必要もない。

夜の輪郭だけが、ただただやさしかった。



何かを、探している。


車窓に沿って律儀に流れる景色達が昔から好きだ。

見るともなしに見ている風を装って、
どの景色からも目を逸らしたくない。瞬きが惜しい。

愛していると言っても過言ではないほど、
無機質でどうでもいいような景色たちに、
どうしようもなく惹かれてしまう。




女が男に恋をするように

あたしは空に恋をしている



この景色たちにも同じようなことが言えて

あたしの恋愛対象は、もはや人間じゃない


見ていると、
呼ばれているような気がしてならない




届くはずもない空が

脳内に広がるような



中毒。



だってこんなに美しいものを、
あたしはほかにしらない。


あとすこしだけ、夜に漬かっていたい。






車窓を連れた小旅行は、


夢を見ること

夢から逃げること

夢を、追うこと。



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